ST02:設定/調整バッファ 基礎編

SAP ST02は、SAPシステムのバッファとメモリ管理を監視し、分析するためのトランザクションコードです。このツールを使用することで、システム管理者はシステムのパフォーマンスに直接影響を与えるキャッシュやメモリの使用状況を詳細に調査し、最適化することができます。ST02は、データバッファ、プログラム(ABAP)バッファ、テーブルバッファ、およびエクスポート/インポートバッファなど、さまざまな種類のバッファの監視に使用されます。

目次

概要

ST02の主な機能

  • バッファの使用状況の監視: システムのバッファサイズと使用率をリアルタイムで監視し、バッファの過剰使用や不足を特定します。
  • スワップ分析: メモリからディスクへのスワップ操作を分析し、パフォーマンスのボトルネックを特定します。
  • ヒット率の分析: バッファのヒット率を監視し、データの再読み込みが必要な回数を減らすことでパフォーマンスを最適化します。
  • 調整の提案: バッファサイズやパラメータの調整を通じて、システムパフォーマンスを改善するための提案を行います。

ST02の使用方法

  1. ST02の実行: SAP GUIで「ST02」と入力し、Enterキーを押してトランザクションを開始します。
  2. バッファタイプの選択: 監視したいバッファタイプ(例:テーブルバッファ、プログラムバッファ)を選択します。
  3. 分析データの確認: 選択したバッファの使用状況、ヒット率、スワップ率などのパフォーマンス指標を確認します。
  4. パフォーマンスの最適化: 必要に応じて、バッファサイズの調整やシステムパラメータの変更を行い、パフォーマンスを最適化します。

ヒントとベストプラクティス

  • 定期的な監視: システムのバッファとメモリ使用状況は動的に変化するため、定期的な監視と調整が必要です。
  • ヒット率の最適化: バッファのヒット率を高めることで、データアクセスの効率を向上させ、システムの応答時間を短縮できます。
  • リソースのバランス: バッファとメモリリソースのバランスを適切に維持することが、システムパフォーマンスを最適化する鍵です。

ST02は、SAPシステムのバッファとメモリ管理のための重要な分析ツールです。適切な監視と調整を行うことで、システムの効率性とパフォーマンスを大幅に向上させることが可能です。

バッファ統計

1. Catalog バッファ

  • 目的: データベースカタログ情報(テーブル定義など)を格納します。この情報の高速アクセスにより、データベース操作のパフォーマンスが向上します。
  • 分析ポイント: ヒット率や読み込み時間を監視して、カタログアクセスの効率を評価します。

2. Program バッファ

  • 目的: ABAPプログラムのソースコードをキャッシュします。これにより、プログラムの読み込み時間が短縮され、システムパフォーマンスが向上します。
  • 分析ポイント: プログラムバッファのヒット率を監視し、適切なバッファサイズを維持しているかを確認します。

3. CUA Screen バッファ

  • 目的: Common User Access (CUA) 標準に準拠したスクリーン定義を格納します。ユーザーインタフェースの応答性が向上します。
  • 分析ポイント: スクリーン遷移の速度とヒット率に注目して、ユーザーエクスペリエンスの最適化を図ります。

4. Calendar バッファ

  • 目的: 日付とカレンダー情報をキャッシュし、システムが日付関連の計算を高速に実行できるようにします。
  • 分析ポイント: カレンダー情報のアクセス速度とヒット率を監視します。

5. OTR (Online Text Repository) バッファ

  • 目的: 多言語対応のテキスト要素(ラベル、メッセージなど)を格納します。アプリケーションの国際化をサポートします。
  • 分析ポイント: OTRアクセスの効率とヒット率を監視し、多言語環境でのパフォーマンスを評価します。

6. Table バッファ

  • 目的: データベーステーブルの内容をメモリ内にキャッシュし、データアクセスの速度を向上させます。
  • 分析ポイント: テーブルバッファのヒット率とスワップ率を監視し、データアクセスの効率を最適化します。

7. Export/Import バッファ

  • 目的: ABAPプログラム間でデータを共有するために使用されるメモリ領域です。EXPORT TO MEMORYおよびIMPORT FROM MEMORYステートメントで使用されます。
  • 分析ポイント: データの転送速度と成功率を監視します。

8. Exp./Im./SHM (Shared Memory) バッファ

  • 目的: アプリケーション間で大量のデータを効率的に共有するために使用される共有メモリ領域です。
  • 分析ポイント: 共有メモリの使用状況とアクセス効率を監視し、アプリケーションのパフォーマンスを最適化します。

これらのバッファ項目を通じて、SAPシステムは多様なデータとプログラムコードの高速アクセスを実現し、システム全体の効率性とパフォーマンスを向上させます。各バッファのヒット率や利用状況を定期的に監視し、適切なバッファサイズと最適化戦略を維持することが重要です。

SAPメモリ

1. Page Area

  • 目的: ユーザーセッションのコンテキスト情報を保存するために使用されます。ロールエリアとページエリアは、ユーザーのセッションデータを格納するために連携して動作します。
  • 分析ポイント: ページエリアの使用状況を監視して、セッションデータの管理効率を評価します。ページメモリの過剰使用は、セッション管理に関する問題を示唆する場合があります。

2. Extended Memory

  • 目的: プロセス間で共有されるメモリ領域で、プログラムの実行に必要なデータを格納するために使用されます。これにより、SAPシステムのメモリ使用効率が向上します。
  • 分析ポイント: 拡張メモリの使用量と上限を監視し、メモリが適切に割り当てられているかを確認します。拡張メモリの過剰な使用は、メモリリソースの圧迫を示す可能性があります。

3. Ext. Global Memory

  • 目的: 拡張グローバルメモリは、特定のアプリケーションサーバー上の全プロセス間で共有されるメモリ領域です。このメモリは、グローバルなデータ交換とプログラムの実行に利用されます。
  • 分析ポイント: グローバルメモリの使用状況を監視して、システム全体のメモリ配分を評価します。

4. Shared Objects

  • 目的: 複数のアプリケーションがアクセスする共有データをメモリ内に保持するために使用されます。これにより、データの重複を防ぎ、メモリ使用効率が向上します。
  • 分析ポイント: 共有オブジェクトのメモリ使用量を監視し、共有データの管理が効率的に行われているかを評価します。

5. Table Buffer

  • 目的: データベーステーブルの読み出しを高速化するために、テーブルデータをメモリ内にキャッシュします。
  • 分析ポイント: テーブルバッファのヒット率とスワップ率を監視し、データアクセスの効率を最適化します。

6. Catalog Buffer

  • 目的: データベースのカタログ情報(例えば、テーブルのメタデータ)をキャッシュするために使用されます。これにより、データベース操作のパフォーマンスが向上します。
  • 分析ポイント: カタログバッファの使用状況を監視し、データベーススキーマ操作の効率を評価します。

7. Heap Memory

  • 目的: 特定のユーザーセッション専用に割り当てられるメモリ領域で、拡張メモリがいっぱいになった場合に使用されます。
  • 分析ポイント: ヒープメモリの使用量を監視し、各セッションが過剰なメモリを消費していないかを確認します。ヒープメモリの過剰な使用は、メモリリークの可能性を示唆する場合があります。
  • メモリ領域の使用量と限界を定期的に監視することで、システムの健全性を評価し、パフォーマンスの問題を早期に特定できます。
  • メモリ使用量が高い場合や特定のメモリ領域の使用が限界値に近づいている場合は、システムの設定を調整するか、追加のメモリリソースを検討する必要があります。

コール統計

1. Select single

  • 説明: データベースから単一のレコードを選択(検索)する操作です。主に主キーまたはユニークな条件を使用して特定のデータを取得する際に使用されます。
  • 分析ポイント: 高頻度で実行される”Select single”操作は、インデックス設計が適切か、または特定のデータアクセスパターンがパフォーマンスに影響を与えていないかを評価するための指標となります。

2. Select

  • 説明: 複数のレコードを選択(検索)する操作です。より複雑な検索条件や範囲指定を伴う場合が多く、結果セットが大きくなる可能性があります。
  • 分析ポイント: “Select”操作の頻度と実行時間を分析することで、データベースの読み込みパフォーマンスと、適切なデータフェッチ戦略が使用されているかを評価します。

3. Insert

  • 説明: 新しいレコードをデータベースに挿入する操作です。データの追加に関連します。
  • 分析ポイント: “Insert”操作の実行時間と成功率を監視し、データの追加が効率的に行われているか、また、インデックスやトリガーの影響を受けていないかを評価します。

4. Update

  • 説明: データベース内の既存レコードを更新する操作です。特定の条件にマッチするレコードの値を変更します。
  • 分析ポイント: “Update”操作の頻度と実行時間を分析し、データの更新がパフォーマンスに与える影響を評価します。過剰な”Update”操作は、ロック競合やパフォーマンス低下の原因となる場合があります。

5. Delete

  • 説明: データベースからレコードを削除する操作です。特定の条件にマッチするレコードを取り除きます。
  • 分析ポイント: “Delete”操作の頻度と実行時間を監視し、データの削除が効率的に行われているか、また、削除操作がシステムのパフォーマンスに与える影響を評価します。

6. Total

  • 説明: 上記のすべてのデータベース操作(”Select single”, “Select”, “Insert”, “Update”, “Delete”)の合計回数と実行時間です。
  • 分析ポイント: 総合計を通じて、システム全体のデータベースアクセスパターンと負荷を評価します。総合的なデータベースアクセスの効率性と最適化の機会を特定するための重要な指標です。

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この記事を書いた人

ただのSAP Basis/インフラエンジニアです。
保有資格:SAP HANA、Azure for SAP、PMP、TOEIC900の凡人。

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